『キッチン・ストーリー』
		
		
		
		
		 「キッチン・ストーリー」という映画を観ました。
		
		キッチンでの人間の行動調査のため、スウェーデンの研究機関からやってきた研究
		
		員と、被験者であるノルウェー人の交流を描いた作品です。
		
		
		
		 調査員は被験者の家のキッチンで、24時間行動を記録するのですが、調査の
		
		正確さを保つ為、調査員と被験者は一切口をきいてはいけないというルールが 
		
		あり、しかも違う文化圏の人間同士ということもあって、映画の最初の方では2人の
		
		気まずさがユーモラスに描かれています。
		
		
		
		 あるきっかけで、2人は言葉を交わすようになるのですが、個人的にはこの無言の
		
		部分が気に入ってしまいました。映画自体には「話をしてみないと分からない」という
		
		メッセージも込められているようでしたが、無言の拒絶、不快感の表明など、言葉
		
		無しのコミュニケーションもぬかりなくチャーミングに描写してあります。
		
		それと、一時期日本ガイシのCMコピーに「ところがあなたと関係してる」というのが
		
		ありましたが、会話がなくても、無視していても、人と人が隣り合えば、ちょっとは
		
		お互いに影響されるのかもしれません。電車で隣の知らない人の何気ない咳払
		
		いが、何らかの心の動きを起こさせないとも限りません。そんな事もふと思いました。
		
		
		
		この映画のキャッチフレーズは「ゆっくり友達」です。
		
		これは個人的には「時間をかけて仲良くなる事はスバラシイ」という意味ではないよ
		
		うに思います。そういう一般論的前向き的響きに食傷気味だったせいもあるかもし
		
		れませんが。
		
		2人の登場人物はたまたま友達になったのかも知れない、もしかして気まずいまま
		
		別れるケースだってあるかも知れない、それでも2人はコミュニケーションを持った事
		
		になるし、そのコミュニケーションに心を砕いている姿って可愛らしいんじゃないかと。
		
		
		
		 そう曲解をさせてくれるノリシロのあるこの映画、結構好きです。(同じような理由
		
		でトーベ・ヤンソンの作品も好き!北欧ってそういう土壌があるのでしょうか。)
	
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